キムタクの『ヤマト』は果たしてどうなる？（前）

キムタクのキムタクぶりが、また心配されている（笑）

木村拓哉主演の映画『ヤマト』（12月1日公開）が製作費を20億円かけて完成。すでにマスコミ向けの試写が始まっているが、原作を忠実に描いたことで注目を集めているという。

ささきいさおの歌の通り、ヤマトが地球を救うため、イスカンダルまで旅をして帰還するまでを描くというわけだ。「日刊ゲンダイ」（10月15日付）ではこう書かれている。

主人公の古代進を木村拓哉、ヒロインの森雪を黒木メイサ、他にも柳葉敏郎、山崎努、西田敏行、緒形直人、高島礼子ら豪華キャストが登場する。
「CGやVFXは邦画としては最高峰のレベルです。戦闘シーンは手に汗を握ります。SF作品を実写化するとたいていは原作ファンをがっかりさせるトンデモ映画が多いですが、今回の実写版『ヤマト』は原作ファンも納得のいくレベルの作品に仕上がっています」（映画批評家・前田有一氏）
　もっとも、とんな声もある。
「アニメのキャラクターの印象が強すぎて、戦闘服姿のキムタクは古代進のコスプレにしかみえない。森雪の鼻を指でピンとはじくといったキムタク流のクサいアドリブも鼻につきました」（映画ライター） 　キムタクが台無しにしなきゃいいけど。

木村拓哉の映画といえば、これまでにもいろいろ話題を呼んだ。

たとえば　2007年9月に封切られた「HERO」では、公開初日にフジの亀山千広映画事業局長が、その4年前に大ヒットした「踊る大捜査線　THE　MOVIE2」が記録した興収173億円以上を狙うとまでコメント。

宣伝も派手だった。手始めに同年5月に開かれた「カンヌ国際映画祭」には、「HERO」と、やはりテレビドラマが映画化されることになった「西遊記」のPRで、木村と香取慎吾がカンヌ入りした。

「聞けば木村拓哉は呼ばれてないのにカンヌに行くんだろ。勝手にブース作って参加しちゃうんだろうけど、何だかなぁ」というのはビートたけし（「東京スポーツ」2007年5月22日付）。

「ブース作って……」というのは、マーケット用ブースを借りて映画を見せる飛び入りのデモンストレーション。場所が場所だけにPR効果はあるといわれている。しかし、勝手にやってることなので何をやろうが賞レースとは一切関係ない。

芸能レポーターは口をつぐむが、普通は誰もがたけしと同じように思っているだろう。

「FNS27時間テレビ」でクイズ番組に「HEROチーム」として出演。流行語大賞モノの迷回答が別の意味で存在感を際だたせた。

8月初旬には日本武道館で完成披露試写が大々的に行われた。木村や松たか子、大塚寧々、阿部寛ら主要キャストが長さ50メートルに及ぶ花道「HERO’Sカーペット」を歩いてみせ、八嶋智人らが「自分にとってのヒーローは木村拓哉」などと褒めちぎって盛り上げた。

それでいて、肝心の作品の出来はドラマの延長のようなもので、映画館でカネを払って見るほどの出来じゃないという声も出ていた。

テレビ媒体だけではない。「日刊スポーツ」では、「文化・芸能」面をほとんど一面使った全10回の超ロングインタビューを掲載した。「キムタク特集」を企画した雑誌は20誌以上にのぼるといわれる。

「HERO」に先立って、やはりテレビドラマが映画化された香取慎吾の「西遊記」も、同じように他局まで使った宣伝が行われた。たとえば、関係ないテレビ局の出演にも香取は孫悟空の格好をした。しかし、興行的にはコケてしまったこともあって、「HERO」はいっそう強引なまでの宣伝が行われた。

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常識的に考えれば、ヨソのテレビ局が作った映画を他局を使って宣伝するなどということはおかしい。しかし、そこは“無理が通れば通りが引っ込む”あのジャニーズ事務所である。想像はつくと思うが、「日刊ゲンダイ」（2007年5月24日付）には、こう書かれている。

「某局の編成担当が“他局製作の映画の宣伝は難しい”とSMAPの関係者にはっきり伝えたそうです。すると、間を置かず幹部が局にやって来て、発売が決定していたドラマのDVD化の凍結の話を持ち出されたなんて話まである」（業界関係者）

「『対話』と圧力」は相変わらずである。

そこまで徹底して9月8日の封切りを迎えたものの、「『踊る大捜査線』超え」はおこがましかった。「代表作」でかつ大宣伝の割には……、という物足りなさが残る出来と言わざるを得なかった。

今回はそうならないように願いたいものである。

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